第20章 10月31日 渋谷にて
「なっ……!」
記憶にあった最後の場所、109前に辿り着いた伏黒は絶句した。
109を含め、辺り一帯が更地になっている。
ビルも道路も見る影もなく、ただただ細かな瓦礫が広がるのみ。
本当に少し前まで自分がいた場所なのかと目を疑う程の変わり様だ。
ここで何が起こった……?
……魔虚羅がやったのか?
それとも宿儺の仕業なのか?
どちらもやりそうなだけに判断がつかない。
「っ、まさか……!」
渡辺もこれに巻き込まれたんじゃ……!
いくら反転術式が使えるといってもこれでは即死だ、ひとたまりもない。
生存の可能性は絶望的……
嫌な汗が背中を伝う。
あの時、2人とも呪詛師に殺されそうになっていた状況を打開するために調伏の儀式に踏み切ったが、ここまで考えが至らなかった。
こんなことになるならもっと別の手段を選んで……
……いや、あの状況で選択できる手段など、ほぼ無かった。
頭が真っ白になり、膝から力が抜けそうになったところで、玉犬の吠える声が聞こえた。
目の前の更地とは反対方向からだ。
渡辺が見つかったのか?
この方角なら、巻き込まれていない……?
伏黒は祈るようにその場から走り出していた。