第20章 10月31日 渋谷にて
「宿儺!?」
「理由は分からんが、気絶したオマエの怪我を治し、ここまで運んできた……その後すぐにどこかへ行ってしまったが、あれは虎杖ではなく宿儺だった、間違いない」
確かにどこかで宿儺の指が解放された気配はしていた。
だが、虎杖がそう易々と肉体の主導権を明け渡すとは考えにくい。
……しかし、宿儺であれば魔虚羅にも対抗できる。儀式に乱入して調伏をなかったことにすることもできただろう。
その点だけは辻褄が合う。
同時にあの場いたなずなが宿儺と居合わせたということ。
何事もないとは考えられない。
そこまで思い至った伏黒は、言うことを聞かない身体を無理やり動かし、夜蛾の制止も無視してベッドから飛び出していた。
宿儺は殺しを愉しむ。
杉沢第三高校で初めて虎杖が宿儺の指を飲み込み、宿儺が表出した時、声高に鏖殺だと、女子供はどこだと嗤っていた。
伏黒が気絶した後、どうなったのか。
……宿儺はなずなを嬲り殺しにしたのではないか。
儀式中であれば彼女が助かる可能性もまだあるが、魔虚羅が倒され、儀式終了後だったら取り返しがつかない。
それにまだ生きていると宿儺が判断すれば、たとえ仮死状態でも手を下すやもしれない。
振り払っても振り払っても次々と最悪の光景が頭に浮かんで離れなかった。
伏黒は懸命に捻出した呪力で玉犬を呼び、スクランブル交差点へ向かって走る。