第20章 10月31日 渋谷にて
23:14 道玄坂 109前―
全てやり終えた宿儺は更地にした場所に戻ってきていた。
「……小僧、せいぜい噛み締めろ」
顔に浮かび上がっていた宿儺の紋様が薄らいで消えていく。
虎杖の目の前に広がるのは、更地になった一帯。
少し先に腹面と背面に嫌に綺麗に両断され、絶命した呪詛師。
全部、見ていた。
全部、聞いていた。
跡形もなく切り刻まれた避難中だった人々。
数え切れない程、殺した。
セーラー服の姉妹は姉の前で妹を細切れにして姉もその後すぐに殺し、パンダ達を足止めし、特級呪霊の攻撃に巻き込んだ。
猛烈な吐き気が迫り上がって、倒れ込むようにその場に嘔吐してしまう。
うまく呼吸できず、口から漏れるのは荒く震えた吐息ばかり。
―なんで俺が死刑なんだって思ってるよ―
「死ねよ」
あの時の自分は何も分かっていなかった。
宿儺の脅威を何一つとして理解していなかった。
自分は生きていてはいけなかったのだ。
次から次へと涙が溢れてくる。
―自分の死に様はもう決まってるんだわ―
「自分だけ!自分だけぇ!!」
強烈な自責と後悔。
しかし、脳裏に浮かぶのは祖父の最期の言葉。
―オマエは大勢に囲まれて―
―人を助けろ―
―人を―
「死ね!今!!」
自分で自分が許せなくて渇いたように、飢えたように地面を掻く。
―オマエがいるから―
「……行かなきゃ」
このままじゃ俺は、ただの人殺しだ。
「戦わなきゃ」
強迫観念に近い使命感に突き動かされるように虎杖は歩き始めた。