第20章 10月31日 渋谷にて
その隙に先程剣を受けた左腕を見やる。
あの刃、対呪霊に特化した“退魔の剣”か。
反転術式と同様の正のエネルギーを纏っている。
俺が呪霊なら、あの一撃で消し飛んでいたな。
魔虚羅の背後の円環がギギギと廻る。
すると魔虚羅は傷ひとつなく立ち上がってきた。
それを見た宿儺は特に驚くわけでもなく、片眉を少し上げる。
傷が癒えている……
何かしたな。
「どう出る?」
もう一度“解”を見舞う。
しかし、斬撃が摩虚羅に届く前に剣で弾かれた。
逸れた斬撃が魔虚羅の背後のビルを穿つ。
「!」
斬撃を弾いた……!
俺の術が見えているのか!
瞠目した宿儺に凄まじい衝撃が襲い、そのまま吹き飛ばされてビルを何棟も突き抜けた。
ガラガラと崩れたビルの瓦礫の中から起き上がり、魔虚羅を迎え撃つ。
「やってくれたな」
迫る剣先を躱し、魔虚羅の首に足を回し、頭を掴む。
「お返しだ」
ゼロ距離の斬撃が魔虚羅を縦に両断し、そのまま踵落としで地上へ叩きつけた。
すぐに自らも降りた宿儺は油断せずに魔虚羅を落とした場所を睨んだ。
俺の読みが正しければ立ってくるな。
土煙が立つ中、またも円環が廻り、魔虚羅はスッと立ち上がる。
一度目と同様に斬撃の跡は見る影もない。
「……やはり、八岐大蛇に近いモノだな」