第20章 10月31日 渋谷にて
宿儺が異様な呪力の元へ急行すると、まさに魔虚羅が重面の頭を潰さんと拳を振るっていた。
重面の顔に魔虚羅の拳が迫り、そのまま地面を抉る。
……が、その場からは重面がいなくなっていた。
魔虚羅が振り向くと伏黒の傍に宿儺、そして宿儺が左手で掴んでいるのは重面。
何が起こったか理解できていない重面を放置し、宿儺は血塗れの伏黒の状態を素早く確認する。
……仮死状態か。
魔虚羅と重面にも目をやり、今の状況を考察する。
成程……
やはりこのゴミを助けたのは正解だったな。
おそらく道連れの形で調伏の儀に巻き込んだのだろう。
このゴミも死ねば儀式終了、伏黒恵の死も確定してしまう。
それは宿儺にとって都合が悪い。
「死ぬな。オマエにはやってもらわねばならんことがある」
そう呟いた宿儺は伏黒に反転術式を施した。
「あっ、あのぉ〜」
「黙れ。おとなしくしていろ」
まだ状況を理解していない重面をピシャリと遮り、魔虚羅を見据える。
式神の調伏、
宿儺もその特性は知っている。
今の宿儺は儀式の参加者とは見做されない。
つまり、宿儺がこのまま魔虚羅を倒せば、調伏の儀は無かったことになるのだ。
そうすれば、伏黒も命を落とさずに済む。
「……味見といった所だな」
舌なめずりした宿儺に魔虚羅が襲い掛かった。
その剣を左手で受けると、衝撃で地面が割れる。
波状に広がったその衝撃波は重面にも届く。
チリッと焼けつくような感触に宿儺は剣を流すと魔虚羅の顔面に数発入れ、掌印を向ける。
「解(カイ)」
縦横に切れ込みが入り、魔虚羅は膝をついた。