第20章 10月31日 渋谷にて
一意専心―
狙うは魔虚羅の心臓部。
身体は人のように見えるけれど、その実は硬いかもしれない。
だから踏み込む勢いも乗せて渾身の威力を出す。
魔虚羅がこちらを向くが、それも今のなずなには非常に緩慢な動作に映った。
大丈夫、
十分狙える。
ダンッと強く踏み込み、一気に魔虚羅との距離を詰め、魔虚羅に隙を与えず、すり抜けざま逆袈裟に鬼切を振り抜いた。
肉と骨を断つ感触がなずなの手に伝わる。
と同時に悔しさが滲み出た。
凄まじい威力で繰り出された斬撃は魔虚羅の右腕を切り飛ばしていた。
しくじった!
相手の異様な呪力で手元が狂った……!
でも、これで右腕とそこについた剣は使えない。
もう一度仕掛けて、次こそは……
なずなが振り向くとほぼ同時にバシュンと音を立てて領域が消える。
初めての領域展開、
魔虚羅を仕留め損なった動揺で呪力出力が乱れ、維持できなくなってしまったのだ。
「くっ、まだ……!」
もう一度、領域を展開すればまだチャンスはある。