第20章 10月31日 渋谷にて
……まだ生きてる。
そう思い至って冷静さが戻ってきた。
自分のやることはただひとつ。
この怪物を倒す。
そして、一刻も早く伏黒くんを助ける。
七海さんが渋谷の料金所に救護所が設置されてると言っていたから、そこへ連れて行けば家入先生がきっと治してくれる。
でも……
どうやって倒す……?
私のできることでは倒せない。
そもそも攻撃を当てられない、と思う。
当て、られない。
……だったら、当てるにはどうしたらいい?
その自問にもすぐに答えが見つかった。
―呪術の究極・領域展開―
領域内の付与された術式は必中。
私の呪力出力量は、領域を展開するにはとても足りない。そもそも自分にはできないことだと決めつけていた。
―鬼切の呪力をなずな自身の呪力として使うこと―
五条の言葉がなずなの頭の中で響く。
鬼切の呪力は私の呪力。
私は一振りの刀。
ならば、鬼切は私の身体の一部も同然。
余計な部分が削ぎ落とされ、思考が研ぎ澄まされていき、なずなは手元に目を落とした。
……ねぇ鬼切、お父さんを呪った時はもっと呪力を出していたよね?
鬼切の呪力の流れる方向を自身ではなく、外側に向け、溢れさせる。
なずなの意思に呼応するように鬼切から呪力が流れ出し、波打つようにして周囲に広がっていく。
まだ足りない、もっとよ。
あの怪物を閉じ込められるくらい。
絶対にあれを斬るんだ……!
やり方なんて知らない。
でも領域なら知っている。
少年院での不完全な領域、
無垢蕗村での白稚児の領域、
穏やかな海と浜辺が広がる陀艮の領域、
影の海のような伏黒くんの領域、
五条先生との特訓で掴みかけた簡易領域。
鬼切の刀身に指を滑らせ、横一文字に印を切る。
―領域展開―
「刹那無劫ノ理(セツナムゴウノコトワリ)」