第20章 10月31日 渋谷にて
「ゴチャゴチャ話をややこしくすんなし。大好きな人の肉体をゾンビみてぇに弄ばれて黙ってられるかって言ってんだよ」
「夏油様の物語は終わったんだ。もう誰にも汚させない」
「いい加減大人になりなさい、奈々子」
真奈美の一言は奈々子を激昂させる。
―物語は終わった。後は安らかに眠ってほしいだけ―……
それだけは譲れない一線なのだ。
訳の分からない奴に乗っ取られるなんて堪え難い。
「大人だの、子供だの、それを言い出したら終わりだろうが!!」
奈々子がスマホのカメラを向け、向けられた真奈美と祢木は身構える。
「えぇいっっ!!」
一気に戦闘態勢になる双方に大きな声が重圧となって襲い掛かった。
「双方、収めなさい。傑ちゃんが一番望んでいないのは、私達が傷つけ合うことよ。あなた達はどちらも間違っていない」
大声を上げたラルゥはその後は静かに4人を諭した。
「ここでお別れしましょ。各々やりたいようにやりなさい」
「ラルゥはどうすんの?」
「どちらにも付かないわ。ミゲルちゃんと同じ、私はただ傑ちゃんを王にしたかっただけだもの。でも皆、忘れないでね」
「私達は家族、いつかまたどこかで一緒にご飯を食べるのよ」
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「投降するの?しないの?ハッキリしない男は嫌いよ」
たった一言のみの宣言に日下部は内心悪態をつく。
話が短けーんだよ、クソッ。
「俺はパンダだから関係者ないな」
パンダはパンダで能天気。
……でもまぁ、このレベルのが仕切ってる集団だろ?
旨すぎる。
時間いっぱい適当にいなして、特級呪霊の相手はせずにのらりくらりといこう。
咥えていた棒付きキャンディを捨て、その場に正座して刀を構える。
シン・陰流 居合『夕月』
「……それが答えか……」
祢木が手で合図する……前にその背後のビルが突如爆発し、隣接するビルまで破壊する。
しかも何者かが哄笑する声が。
「何だ!?」
「あぁ!?」
この場にいる誰もが何が起こったのか分からず、破壊されたビルに目を向ける。