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妖刀使いの臆病呪術師【呪術廻戦】

第20章 10月31日 渋谷にて



23:01 渋谷ストリーム前―


「日下部〜、もう建物内を調べるのはよくないか?」


日下部とビル内を捜索していたパンダが頬を掻いた。


「帳の外には出せなかったけど、棘のおかげで一般人の避難は粗方済んだし、悟のとこ向かおうぜ。副都心線のB5Fってどう行けばいいんだ?」


日下部もパンダも狗巻から五条封印の伝達を受け、パンダは日下部を急かしているものの、日下部は一般人の避難優先となかなか地下へ向かわないのだ。


「棘も封印はマジって言ってたし、急ごうぜー」

「五条、五条って……世の中の人間は五条だけじゃないでしょーが!!」


その言葉にパンダは雷に打たれたごとく衝撃を受ける。


「今まさにこの瞬間、渋谷の片隅で震えている命があるかもしれん。具体的には小学校低学年の女児で想像してくれ」


狗巻の呪言でだいぶ静かになったものの、今の渋谷は呪霊や改造人間で溢れている。

そんな中、恐怖で泣いている小さな女の子……


「それを見落としてでもみろ!儚い未来を摘み取るのに俺達が加担したと言っても過言ではないっちゅー話よ!!」

「そ、そうかも」

「分かったら、各建物各階、便座の裏まで調べろ、バカヤロー」


そう指示を出しながら、日下部は内心冷や汗をかいていた。


……まずいな、そろそろ言い訳も苦しくなってきた。

俺は絶対B5Fなんて行きたくない。
このままダラダラと時間を潰していたい。
何故なら死にたくないから!


人がはけてパンダの鼻が利き始めたら、コイツ1人でB5Fに向かっちまう。
それも避けたい。

今の渋谷で1人になりたくないから!!


コイツはパンダの癖に俺以上に人の心があるからな。

だがパンダ故に渋谷の土地勘はない。
現在地から副都心線が地上から行けば激近だということに気づいていない。

その証拠に大真面目に駅とは全く別の建物を指差している。


「オレ、あっち見てくる」

「おう、しっかりやれ」


適当なタイミングで新南口から駅に入って迷ったフリしてまた時間を潰そう。


五条封印を成し遂げた連中……

しかもなんだよ、さっきからデカイ呪力が出たり消えたり……


「やってられるか、アホらしい」


小声で呟いた日下部は肩を揉む。


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