第20章 10月31日 渋谷にて
意を決してなずなは重面の方へ大きく踏み込み、鬼切を振り下ろす。
これは呪具で受けられた。
だがなずなにとっては想定内だ。
これはただの小手調べ、予想通り腕力も低い。
「あはっ、首切られてるのになんでそんな動けるの?」
問いかけには答えず、連撃を続ける。
相手は血塗れの首からまだ出血していると思ってる。
私のことを甘く見てる……!
今のうちに戦闘不能にする!!
どんどん攻撃の手を早めると、重面の動きに綻びが。
呪具を持った手は鬼切の連撃を受けるので精一杯、何より足捌きがおざなりになっている。
「ちょ、早いよ……!、うわっ」
転んだ!
起き上がる前に足を!!
しかし足を狙って鬼切を振り下ろそうとするも、ぶわりと嫌悪感が噴出し、手が止まってしまう。
人間の柔らかい肉と硬い骨を切る感触が鮮明にフラッシュバックする。
迷うな、
迷うな……!!
迷った分だけ伏黒くんは危険に晒されるんだから!
そう自分に言い聞かせなければならない程、深層心理では迷っていることをなずなは知らない。
苦渋に歯を食いしばりながら鬼切を振り下ろしたが、重面の足には届いていなかった。
「お、ラッキー!」
隙をついて重面は起き上がってなずなから距離を取ってしまう。
その手には呪具がない。
なずながそれに気づくと同時に脳天に衝撃。
「いっ……!」
上から降ってきた呪具に思い切り殴られる。
だが、その打撃より心理的な衝撃の方が大きかった。
どうしよう、
私、やっぱりダメだ……
人を斬れない……
伏黒くんを助けにいけない……!