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妖刀使いの臆病呪術師【呪術廻戦】

第6章 真昼の逃避行



『伏黒も釘崎も渡辺も、五条先生は……心配いらないか、長生きしろよ……』


それが虎杖の最期の言葉だと聞いた野薔薇は唇を噛んだ。


「長生きしろよって……自分が死んでちゃ、世話ないじゃない。アンタ、仲間が死ぬのは初めて?」

「タメは初めてだ」

「その割に平気そうね。なずななんて、部屋から一歩も出てこないわよ」


野薔薇は昨日病院で手当てを受け、そのまま高専に戻った。
伊地知から虎杖のことを聞いたのはその後だった。


「オマエも平気そうだな」

「当然でしょ、会って2週間そこらよ。そんな男が死んで泣き喚くほど、チョロい女じゃないのよ」

それでも虎杖の明るい声が思い出されて野薔薇は思わず舌打ちする。

舌打ちが聞こえて伏黒が目を向けると、悔しげに歪んだ野薔薇の顔。
口ではなんともないと言っているが、本心では堪えているのが見て取れた。


「……暑いな」

「そうね、夏服はまだかしら」

本格的な夏を前に喪失感が2人を満たしていた。







2人とも黙り込んでいると、ブーツの重い靴音が近づいてきた。


「いつにも増して辛気臭いな、恵。お通夜かよ?」

「禪院先輩……」

またこの後輩は、何度言っても苗字呼びを直さない。

「私を苗字で呼ぶんじゃ……」

「真希、真希!よせって、知らないのか?」

真希の少し後ろの石灯籠の陰からパンダと狗巻が顔を出した。
話を遮られた真希はややイラついている。

「今話し中だ。後にしろ」

「昨日マジで一年坊が1人死んでるんですよ」

おかか、と狗巻も眉を寄せている。


……1年がマジで死んでる……?

「なっ、そういうことは早く言えよ!これじゃあ私が血も涙もない鬼みたいだろうが……!」

知らなかったとはいえ、辛気臭いだのお通夜だの、我ながら散々なことを言ってしまった気がする。

「実際そんな感じだぞ」

先輩としてそれはどうなの、とパンダにも釘を刺された。



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