第20章 10月31日 渋谷にて
「逃げるなと言ったはずだぞ。こうでもせんと分からんか?」
漏瑚は挑発しながら、近くにいた人間の頭をもぎ取り、一瞬で燃やして見せた。
しかし、それも五条が取り乱す要因にはなり得ない。
静かにアイマスクを下ろす。
「……正直、驚いたよ」
「なんだ?言い訳か?」
「違ぇよ、ハゲ」
一段と低く冷たい声、露わになった六眼で冴え冴えと睥睨した。
「この程度で僕に勝てると思ってる脳みそに驚いたって言ってんだよ」
アイマスクに掛けていた手を外し、花御を指差す。
「そこの雑草。会うのは3度目だな?ナメた真似しやがって。まずはオマエから祓う」
線路に降り、漏瑚達との距離を詰める。
「ほら来いよ、どうした?」
痛い程に様変わりした空気、冷え切った殺気に漏瑚と花御は一瞬竦む。
「逃げんなっつったのは、オマエらの方だろ」
漏瑚達が戦闘態勢に入るより五条の手が届く方が一瞬早かった。
漏瑚の腕を捕まえ、花御の上段蹴りを避けると、掴んだ漏瑚の腕を肘の下から折って千切り、それで花御の拳をガードしつつ、蹴りを入れる。
漏瑚が腕を再生させながら離脱しようとするが、五条はそれを許さない。
漏瑚を集中的に追う五条の背を花御が見据えた。
あくまでも漏瑚狙い。
先刻の宣言は心理誘導か。
そしてこの男……無下限の術式を解いている!
術式の微調整を捨て、人間が捌け始めたこのスペースで呪力操作のみのコンパクトな攻めに回るつもりか。
だがこれならわざわざ人混みに紛れる必要もない。
こちらは術式を使うまで!