第20章 10月31日 渋谷にて
時は少し遡る。
「五条悟が一番力を発揮するのはどんな時か分かるかい?」
渋谷での計画を実行する少し前、夏油はそう尋ねながら、シャボン玉を膨らませていた。
行動を起こす前の最終確認の段階にもかかわらず、なぜそんなことを聞くのか、真意が分からず、漏瑚は夏油を睨む。
「勿体ぶるな、話せ」
「……それはね、1人の時だよ。どんな術師でも彼の前では基本足手まといだ。だからまず、その更に下の非術師で五条悟の周囲を固める」
術式反転の最低出力は順転の2倍。
非術師を巻き込まずに使うのはほぼ不可能だ。
“蒼”も同様に漏瑚達に有効な出力まで上げることはできないだろう。
それともう一つ。
「“蒼”を使った高速移動も難しいはずだ。非術師にとってはダンプみたいなものだからね、ぶつかったら即死。この状況では五条悟はただ守りに徹するしかない」
「無量空処はどうする?」
領域展開されてしまったら、こちらはひとたまりもない。
漏瑚の懸念は最もだが、夏油にはそうならないという確信があった。
「五条悟の領域“無量空処”の影響を受けないのは、五条本人と彼が触れている者だけだろう」
仮に五条に雑踏の中から漏瑚達だけを領域内に閉じ込める技量があったとしても、かなりの数の非術師が“無量空処”と帳の間で圧死する。
そんな状況下では9割9分領域展開しない。
「逆に君達も領域を展開しちゃいけないよ。大量の非術師を領域に入れたら、彼も諦めて領域を展開せざるを得ない。領域の押し合いで勝ち目がないのは知っているだろ?」
少し離れた場所で真人、花御、陀艮がシャボン玉で遊んでいるのを見て、夏油は目を細める。
「とにかく五条悟を集中させるんだ。呪霊攻略、非術師救出……最低でも20分は欲しい。その後は私と“獄門疆”の出番だ」
来るべき日まではあと少し。
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