第20章 10月31日 渋谷にて
花御が根を伸ばしたのを見て、色を失くしたのは漏瑚の方だった。
「展延を解くな!花御!!」
それと同時に五条が待ってましたとばかりに花御に振り向き、一息に距離を詰めて花御の目に生えた樹を掴む。
「ココ、弱いんだって?」
そして花御の頭に足を掛け、ズリュリュと音を立てて樹を引き抜いた。
空っぽになった眼窩から血を流し、膝をついた花御を無感情に眺めながら、引き抜いた樹を打ち捨てる。
「やっぱりな。展延と生得術式は同時には使えない」
一瞬で崩れた戦線に漏瑚は焦る。
儂が先刻まであの程度で済んでいたのは、展延で体を守っていたからだ。
基礎的な呪力操作と体術でこのレベル……!
五条悟、逆に貴様は何を持ち得ないのだ!
漏瑚が接近するのに連携して、脹相が穿血を放つがそれは無下限呪術で防御される。
五条の方は舌打ちした脹相を見据えた。
アイツ、呪霊じゃないな。
受肉した九相図って所か、
ウザいけど、こっちの2匹程やる気はないみたいだし、後回しだな。
再び漏瑚と花御の拳が無限を削ってくる。
だが、その勢いは両者でかなり差が出ていた。
別に揺さぶりをかけるつもりはなかったが、五条は淡々と漏瑚に尋ねる。
「いいのか?オマエが展延で僕の術式を中和する程、僕はより強く術式を保とうとする……こっちの独活(ウド)は、もうそれに耐える元気がないんじゃない?」
身を翻して花御の方に無下限を集中させた。
展延の追いつかない花御が耐えきれずに潰れ始めたのを見て、漏瑚は慌てて人間に炎を向ける。
少しでも五条の意識をこちらに向けなければ!
「五条悟、こっちを見ろ!」
しかし間に合わず、花御は押し潰されていく。
そして弾けるように祓われてしまった。
ホームの一部を丸く抉った跡には、花御の呪力の残滓が燻っている。
「花御……」
凍てつくような青い瞳がこちらを向いた。
「次」