第20章 10月31日 渋谷にて
煌めいていそうな背景を醸し出す2人を虎杖は冷めた目で見ていた。
早く行こうと急かそうとしたタイミングで冥冥のスマホが鳴る。
「はい冥冥……へぇ」
電話口の補助監督から手短に報告を受け、冥冥は電話を切ると虎杖に向き直った。
「虎杖君、行き先変更だ。明治神宮前駅に渋谷と同様の帳が降りた。私達はそちらに向かう」
冥冥は自分の背丈の3分の2程ある大きな包みを憂憂に持たせ、霊園の出口へ歩き始める。
「走るよ、ついておいで」
「押忍」
虎杖もすぐ後をついて走り出した。
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20:40 東京メトロ渋谷駅 B5F 副都心線
吹き抜けを通り、線路に降り立った五条に漏瑚は1つしかない大きな目をすがめた。
「来たな」
対峙する五条は待ち受けていた漏瑚、花御と初めて見る脹相を前に喉の奥で笑う。
「準備バッチリってわけだ。これで負けたら言い訳できないよ?」
「貴様こそ初めての言い訳は考えてきたか?」
すかさず花御が木の根を伸ばし、吹き抜けと出入口を完全に塞ぐ。
「んなことしなくたって逃げないよ。僕が逃げたら、オマエら、ここの人間全員殺すだろ?だから来てやったんだけど」
そんな様子を駅のホームから見ている人々。
彼らは同じ場所を見ているはずだが、その見え方は様々だった。
「あの2人、何喋ってんだ?」
「いや、4人だろ」
「?」