第20章 10月31日 渋谷にて
渋谷ヒカリエから地下に入った五条はB1Fに閉じ込められ、ひしめいている人々を上から眺めて呟いた。
「こりゃひどい」
この下を中心に外と同じく一般非術師を閉じ込める帳が降りてるのか。
だから彼らは外に出られず、下に降りることしかできない。
しかし、更に下の階も同じような状況だろうから、身動きできないのだ。
「ほい失礼」
一応一言断って一般人の上を歩く。
無下限呪術で直接踏みつけることはないが、非術師には宙を歩いているようにしか見えないので、どうしても目立ってしまうのは仕方ない。
人がいない吹き抜けに出て、線路が見える位置まで移動し、ふむと腰に手を当てる。
「……なんとなく狙いは分かったかな。乗ってやるよ」
吹き抜けからは直接見えない位置にいる複数の見覚えある呪力を五条の六眼はしかと捉えていた。
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20:39 青山霊園
「五条先生1人にやらせる!?」
冥冥から任務内容を聞いた虎杖が納得いかないと声を上げた。
「理屈は分かるけどさ、俺達にもできることがあるでしょ!バックアップとか!」
「うん、だからそれをしに今から渋谷へ行くんだよ」
「あっ、そーなの?」
墓石に腰掛ける冥冥の隣で彼女と顔立ちの似た少年、弟の憂憂(ういうい)がため息をつく。
「姉様にバックアップをさせるなんて……五条 悟、贅沢な男ですね」
「彼をその辺の男と同レベルで考えてはいけないよ」
「姉様だって、その辺の女とは違いますっ」
「あぁ憂憂、オマエは本当に愛い奴……」
「また思ってもないことを。姉様が愛でているのは家族ではなく、家族という雇用関係でしょう?」
「フフ……よくわかっているじゃないか、そういう所、好きだよ」
冥冥に優しく肩を抱かれ、憂憂は頬を染める。