第20章 10月31日 渋谷にて
案内された先は渋谷マークシティ レストランアベニュー入口、帳のすぐ外側だった。
シンと静まり返る景色に野薔薇が驚愕する。
「駅前のスクランブル交差点に人がいない!?ハロウィンの渋谷よ!?」
いくら一般人の避難を進めているとはいえ、帳が降ろされてから1時間程で全く人がいなくなるなんてことになるだろうか。
「こ、こんなに人がいないところ、初めて見たかも……」
「そこで何かがあったみたいっス」
野薔薇の隣で呆然とするなずなに新田が説明する。
「当時ここにいた一般の人達はほとんど帳内にいます。皆散り散りに帳の縁まで逃げてきて『五条 悟を連れて来い』と訴えてるっス」
「!?」
「非術師が奴を知っているわけがない。言わされているな」
そう言って直毘人は重力に逆らって伸びた髭を撫でた。
この威厳のある着物の老人、禪院家の現当主で、かつて真希が啖呵を切った相手でもある。
「帳は壊せんのか?」
「難航してるっス。なにせ帳自体は術師を両側から拒絶していないので、力技ではどうこうできません。帳を降ろしている呪詛師をとっちめた方が早そうっス」
「じゃあ、私らはその手伝いだな」
真希が大刀を構えたところで新田が待ったをかける。
「いいえ、皆さんはまだここで待機っス!」