第19章 一世一代
全く冷静になれない頭で必死にさっきの記憶を辿り、なずなはか細い声で打ち明けた。
「……一級の推薦を受けて、この先危ない任務が増えたら、後悔するかもって思って……その、伏黒くんに……好きって言っちゃった……」
その衝撃事実に野薔薇は口から飛び出しそうになった驚きの声をなんとか飲み込み、一番重要なことを問いただす。
「それで、伏黒の返事は?」
「ぁの、えっと……」
「どうしたのよ?」
ここまで打ち明けたのなら、言い淀むことなどないだろうと野薔薇が先を促し、追い込まれたなずなはきゅっと肩を縮こませて、白状した。
「わ、私、返事を聞くのが怖くて……返事は今度でいいからって……」
「言い逃げしたってこと!?」
「うぅ、ご、ごめんなさいぃ……」
「誰に謝ってんの……まぁ、なずなにしてはよくやったんじゃない?」
正直言ってあの任務で関係破綻……まだ関係すらできていないが、もう進展しないこともあり得ると野薔薇は考えていた。
そうならなくても元の状態に戻るまで相当時間がかかると思っていたのだ。
ここぞという時に思い切りがいいのは知っていたが、自ら告白するという形でひっくり返すとは思いもよらなかった。
……逃げ出してくるのも予想外だったが。
「どう頑張ったって明日明後日の授業で顔合わせることになるんだから、もうどうしようもないでしょ。その時は虎杖をしょっ引くなりして協力するわ」
「ぅん……ありがとぅ……」
なずなは真っ赤な顔を膝に埋め、その頭を野薔薇はポンポンと励ますように撫でた。
それが2018年10月30日の出来事―……