第19章 一世一代
夜中だというのに音を立てて寮の廊下を走り、なずなは自室のドアを思い切り閉めて、その場にズルズルと座り込んでしまう。
心臓が破裂しそうなくらい早く、大きく鳴っていてうるさい。
発熱してるんじゃないかと思うくらいに熱い顔を少しでも冷まそうと両手で頬を包むが、全然効果がない。
言っちゃった……!
初めは言うつもりなんて無かったのに!
せっかく仲直りしたのに、私、明日から普通にしてられる自信が無い!
「うぅー……」
唸っていると背後からドアをノックする音。
「なずな?そんな慌ててどうしたのよ?」
音を立てて走り、力いっぱい部屋のドアを閉めたため、その大きな音を聞きつけて野薔薇が出てきたのだ。
「の、野薔薇ちゃん!?今開けるから……!」
夜中に迷惑をかけた申し訳なさもあって、なずなはすぐにドアを開ける。
すると、野薔薇は遠慮なく中に入ってドアを閉め、声を落としてなずなに尋ねた。
「アンタ、伏黒とちゃんと話せたの?」
「う、うん、謝れたしお礼も言えて、制服もちゃんと返せた……でも……」
「でも、何?」
顔を真っ赤にして言い淀むなずなの先を促す。
「さ、最初は謝罪とお礼だけのつもり、だったんだけど……」
モジモジしているといつも野薔薇に咎められるが、この時ばかりは何かを察したのか特に何も言ってこない。