第5章 怪異迷宮
少し走り続けると、遠目に白い塊が見えてくる。
ぼんやりと発光する塊。
目を凝らすと、うごめいているのが見える。
まさになずなを追いかけてきている仮面の呪霊の、その群れだ。
しかし、なずながどんどん群れに近づいているのに反応がない。
あの中に誰かがいる。
なずなは鬼切を抜いて、壁のように立ち塞がる呪霊の群れの一角を切り崩す。
予想外の方向からの攻撃に呪霊はたちまち宙に散開した。
中央には倒れた野薔薇。
「野薔薇ちゃん、しっかりして!」
「う、ん……なずな……?」
駆け寄って横抱きにして、急いで呪霊の包囲網を抜ける。
意識もあるし、呪霊にやられた傷も浅い。
生きていることが分かれば十分だ。
呪霊の群れから少し離れた場所に野薔薇を下ろし、なずなは鬼切を構えた。
伊地知から戦うなと言われているが、群れの後ろからは、なずなを追ってきた呪霊も見える。
野薔薇を連れて逃げても、振り切れずに捕まるだろう。
応戦するしかない。
「許さないんだから……!」
仮面の呪霊。
数こそ多いが、先程斬った感触から単独ではそこまで強くない。
厄介なのは浮いていること。
でも、逆に言えば足場はたくさんある。順に踏み台にしていけば、高い所にいる呪霊にも鬼切は届きそうだ。
走った時と同じ要領で脚に呪力を集中させる。
呪霊がこちらに向かってくるのと同時に床を蹴ってジャンプし、呪霊の脳天を踏んでさらに高く跳ぶ。
上の方に浮いた呪霊を2、3体まとめて切り捨て、床に着地した。
こちらに向かってくるものは問答無用で切り伏せる。
これなら大丈夫、戦える。