第19章 一世一代
いつからか気づけば伏黒くんのことを目で追っていた。こっちを見てくれると嬉しいけど、すごくドキドキして、うまく話せなくなって。
今も心臓が破裂しそうなくらい。
ずっと勇気が出せず、このままでいてもいいかなと思いかけた矢先に、一級推薦をもらった。それは危険な任務が増えることに他ならない。
もし、もしもこの気持ちを伝えずに、私が死んだら?
伏黒くんがいなくなってしまったら?
……―私は絶対に後悔する。
この気持ちを口にしたら、もう元には戻れないかもしれない。
けれど、それに怖気づいて伝えずにいたら、必ず後悔する時が来る。
なずなは意を決して言葉を紡ぐ。
「私にとって、伏黒くんはかけがえのない人で……傍にいるとドキドキして、目が合ってもドキドキして、でもあったかくて……私、あなたのことが、す、好きです」
怖くて顔を上げられない。
伏黒くんはどんな顔をしてるんだろう?
仲直りしたすぐ後、突拍子もないことだから戸惑ってるんじゃ……?
たらりと冷や汗が流れる。
口の中はカラカラに乾き、急激に居た堪れない気持ちになってきた。
極限の状態に置かれると、人は何をしでかすか分からないもので……
「へ、返事は……ま、また今度でいいから!!」
なずなはそう言い放って脱兎のごとく逃げ出した。