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妖刀使いの臆病呪術師【呪術廻戦】

第19章 一世一代



虎杖から明日の夜に伏黒が戻ってくるから、寮の玄関で待ち合わせにしたという連絡を受け、なずなはそわそわしていた。


手元にはずっと持ち歩いていた綺麗に畳んだ伏黒の制服。



まずはなんて言えばいいんだろう?

ごめんなさい?

それとも会ってくれてありがとう?

……あ、制服貸してくれてありがとう、かな。


でも、話しかけることすら、おこがましいことのような気がする。



そして、何より―……




返したくないなぁ……





これを返してしまったら、今度こそ伏黒くんとの繋がりがなくなってしまう。


……伏黒くんと話せなくなるのが辛い。



ひたすら身勝手で、自己中心的な感情。


だが、到底抑えることができない。


返す時が伏黒と言葉を交わす最後の時になるかもと考えるだけで、じわりと目に涙が浮かんでくる。


「ダメ……!ちゃんと返さなくちゃ」


身勝手な考えを振り払うように頭を振る。


虎杖くんにも協力してもらって、機会まで作ってもらったんだから、それを無下になんてできない。


伝えたいことをちゃんと全部伝えられるように。

たとえ最後の会話になったとしても後悔しないように。


まだ夜9時まで時間はあるんだから。













午後8時50分―




夕飯時に虎杖から本当に男子寮で待ち合わせでいいのかと念押しされたが、こちらがお願いしたことだから構わないと返事して今に至る。


伝えたいことは全て再確認して頭に入っているし、借りた制服も忘れずに持った。


「よし……!」


両手で頬を叩いて気合いを入れ、なずなは自室を後にした。




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