第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
「俺が渡辺の影に潜伏して行く。それならバレねぇし」
「そんなことできんの?」
「多分できる」
「で、でも前に人は影に入れないって……」
影の中に呪具を収納できると分かった時に人も入れないかと聞いたら「呼吸ができないだろうからやめた方がいい」と言われたのをなずなは思い出していた。
「呪力操作で呼吸はなんとかなると思う。さすがに影に入るのが俺以外だとできねぇ気がするから、組み合わせは強制的に決まっちまうけど……」
あとはなずながどう思うかだ。
だいぶマシになってきたとはいえ、伏黒と2人きりになると、なずなはいつも緊張して動きも話し方も固くなる。
いざ呪霊との戦いになった時に動けないとなってしまうと、別の案を考えなければならない。
伏黒は念押しのつもりでなずなに尋ねた。
「渡辺はそれでいいか?」
「う、うん……!」
なずなが首を縦に振ったのを見て伏黒も小さくうなずく。
「決まりだな。俺は渡辺の影に潜んで一緒に儀式の詳細を調べる」
なにせ100年おきの儀式だ。口伝で伝えるにも限界がある。
儀式の詳細な手順を記した書物がある可能性は高い。
「オッケー、俺達は村の人達にマーキングの仕方の確認ね」
なずなを1人にしないということに安堵した虎杖はいつもの調子に戻っている。
「……あれ?でもそもそも俺達マーキングのことは気にしなくていいんじゃね?」
もしマーキング方法が判明しても避けるようにと伊地知が言っていたのを思い出し、虎杖は尋ねた。
「俺達が知らない内にマーキングされてたら危ねぇだろ。それを予防するための聞き込みだ。どうせ儀式まで暇だしな」
虎杖と野薔薇は実質呪霊が現れるまで手持ち無沙汰になるので、時間の有効活用だ。