第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
ちゃんと考えた結果だということは分かったが、傍で聞いていた虎杖も少し困り顔だ。
「だからって何も相談なしであれはないだろ……」
「ごめん……」
「ってか伏黒も何か言いなさいよ!」
なずなは視線を下に向けて謝るが、返答を変えるつもりはない。
その意志を感じた野薔薇が顎に手を当てて何か考えている伏黒に突っかかる。
伏黒に諭されればなずなも折れるかと思ったのだ。
大体、こういうことには結構反対する伏黒が何も言わないのもおかしい。
しかし、伏黒の返事は野薔薇の期待したものではなかった。
「……いや、これでいい。虎杖と釘崎は村人にマーキング方法の心当たりがないか聞いてくれ。渡辺は儀式の詳細を調べてほしい」
「ハァ!?アンタ最初と言ってること違うじゃない!」
「2人1組を変えるつもりはねぇよ」
いよいよ噛みついてきた野薔薇に対して最後まで聞けとたしなめる。
「俺が渡辺につく」
「……えっ、と、あの、それは……?」
どういうことなんだろう?
伏黒の言葉の意図が理解できず、なずなを始め、虎杖と野薔薇も頭に疑問符を浮かべている。
村長からはなずな1人で来いと言われたのだ。
伏黒がついて行ったら追い出されるどころか、生贄に会うこともできないかもしれない。
だが、そんなことは伏黒も承知しているだろう。