第5章 怪異迷宮
「普通は呪霊と同じ等級の術師が任務にあたるの。今回だと五条先生とかだね」
「そっか……で、その五条先生は?」
キョロキョロと辺りを見渡すが見当たらない。
「出張中。そもそも高専でプラプラしてていい人材じゃないんだよ」
呪術師の等級は同等級の呪霊を倒せる実力を持つことを意味する。
特級呪霊が相手なら、特級呪術師、最低でも一級呪術師の派遣がセオリーだ。
しかし、今回はそういうわけにもいかない事情があった。
「残念ながら、この業界は人手不足が常。手に余る任務を請け負うことは多々あります」
そう、特級呪術師だけではそもそもの頭数が足りず、到底手が回らないのだ。
伊地知は眼鏡を直し、ただ、と続ける。
「今回は緊急事態で異常事態です。絶対に戦わないこと。特級と会敵したときの選択は、逃げるか、死ぬかです。自分の恐怖には素直に従ってください。君達の任務はあくまで生存者の確認と救出であることを忘れずに」
特級呪霊に変態する危険性のある呪胎。
それだけでもまだ1年生の彼らには荷が重い。
「あの、正は?息子の正は大丈夫なんでしょうか?」
少年院の入口にいる女性が声を上げた。
落ち着いてくださいと警官が宥める。
「面接に来ていた保護者です」
伊地知はそう呟くと、女性に毒物が撒かれた可能性があり、現状ではこれ以上は言えないと伝える。
それを聞いた女性は顔を覆って蹲ってしまう。
どうしてこんなことにと泣いている女性を見て、虎杖は口を引き結んだ。
「伏黒、渡辺、釘崎……助けるぞ」
「うん……!」
「当然」
伏黒だけは、虎杖の言葉に頷かなかった。