第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
「それでは皆さん、くれぐれもお気をつけて」
無垢蕗村に到着した4人は伊地知に見送られ、村に張られた結界を抜けた。
閑散とした村だ。
道を歩く者はほとんどおらず、いてもこちらに見向きもせずに無視するか、少しだけ見て視線を逸らす者ばかり。
伊地知の言った通り、全く歓迎されていない。
「……な、なんだか空気悪いね……?」
「俺達はよそ者だからな。あまりこっちからも見ない方がいい」
難癖つけられるかもしれねぇから、と伏黒がキョロキョロしているなずなを注意した。
なずなの方はビクリと肩を揺らしてうなずき、真っ直ぐ前に視線を戻す。
村長がいるという公民館までの道すがら、野薔薇が小さく舌打ちした。
前を行く虎杖がその表情を窺うと、不機嫌の臨界点だと顔に書いてある。
「釘崎、もしかしてメチャクチャ機嫌悪い?」
「この顔見て分かんないの?私の大嫌いな雰囲気よ。あの村にソックリ」
「あの村って?」
「私の家があるド田舎の村よ。アイツらの態度が気持ち悪いくらい同じ」
大好きな沙織ちゃんを追い出した空気、よそ者を排斥するあの空気そのものだ。
「私達が敵認定されたらマジでここから追い出されるわよ。こういう態度の奴らは徹底的にやるから」
悪態を言ってやりたいが、ギリと奥歯を噛んで我慢する。
居心地悪いことこの上ないので、さっさと祓って立ち去りたいところだ。
言外にそう言う野薔薇に虎杖達3人も尚更先を急いだ。