第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
一方、男湯では―……
「なぁなぁ、伏黒ってどんなタイプが好きなの?」
「なんだよ、いきなり」
虎杖が口火を切ると、伏黒が怪訝そうに眉を寄せた。
そのくだりは苦い記憶を思い出させる。
2ヶ月ほど前、東堂に同じ質問をされた時だ。
その頃は死んだことになっており、伏黒が東堂にボコられたこと自体を知らない虎杖は、苦々しい顔をしている伏黒に畳みかける。
「だってこの前俺は言ったけど、オマエから聞きそびれてたし」
虎杖が言っているのは交流会の直後、先輩達との親睦を深める目的で集まった時のこと。
たまたま男子だけになったタイミングでそういう話になったのだ。
その時はなずなが伏黒に好意を寄せているとは知らなかったので、うやむやにされても特に気にならなかったが、今日は違う。
野薔薇から事あるごとに探りを入れろとせっつかれていることもあり、どうしても聞き出さなければならない。
「俺ばっか不公平だって。伏黒も教えろよー!」
眉を寄せて口を引き結ぶ伏黒の方が少しだけ旗色が悪い。
それを見た虎杖はあともう一押だと確信する。
「傾向とかだけでもいいから!例えばそうだなぁ……優しい子は好き?よく喋る子とおとなしめな子だったらどっちがいい?」