第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
極めつけはその身体。
野薔薇も時間が合えば高専の大浴場で一緒になるが、手足の筋肉は男性顔負けレベル、腹筋も見事に割れている。
だが体つきが男性的なのかといえば、全然そんなことはなく女性的で、艶のある髪は全く傷んだところが見当たらないし、肌は色白できめ細かく、胸も湯船に浮かぶほど豊かなのだ。
「すごいよねぇ、真希先輩……」
「この前髪とか肌のお手入れどうしてるのか聞いたけど、あんまり気にせずにあの状態らしいわよ」
「ま、ますます羨ましい……!」
ちなみになずなは、最近野薔薇からスキンケアを教わり始めたものの、任務や訓練で疲れた時には忘れてしまうので、まだまだといったところ。
「そんなことより早く入るわよ。せっかく美人の湯なんだし」
「うん!」
伏黒の好みが容姿ではないことは判明しているので、なずなが気にしているほど胸の大きさは心配しなくてもいい。
しかし、それとは別に自分磨きするのはいいことだと思う野薔薇は余計なことは言わないでおいた。
「野薔薇ちゃん、来て来て!露天風呂すごいよ!」
「はいはい、今行くから」
身体を洗い終わった後、これまでの卑屈はどこへやら、風呂好きスイッチが入ったなずなは駆け出さんばかりの勢いで露天風呂へ直行。
野薔薇は苦笑しながらそれについて行く。
なずながここからとてつもなく長風呂をすることをこの時の野薔薇はまだ知らなかった。