第1章 妖刀事件
伏黒となずなが部屋を出ると、ちょうど五条と鉢合わせた。
「五条先生、生き残ってたのは彼女だけでした」
五条は屈んでどこか遠くを見ているなずなの肩に手を置く。
「なずなだね?比呂彦の部屋にあった刀はどこだい?」
「……かたな……?」
「鬼切って刀があったはずなんだけど」
「鬼切、……お父さんが、持ってる」
「お父さんはどこへ?」
「外に……出て、あとは、……分からないです」
まだ家族が殺されたことを受け入れることができず、途切れ途切れにしか返答できない。
「ちょっとマズいことになっちゃったな……」
「なにが……?」
伏黒の問いかけは異音にかき消される。
音のした方を見ると、複数の呪霊が這い出してきていた。
ぎ、ぎぎ、ぎーーー
不意に聞こえた異音もなずなにはどこか遠くの出来事のように感じられた。
「…………?」
音のした方にゆっくり振り返ると、壁から天井から、呪霊が湧いてきていた。
残穢に引き寄せられ、侵入してきたのだ。
「恵、ここは任せた。僕は比呂彦を探してくる。なずなのことも頼むよ」
「分かりました」
見たところそこまで強い呪霊はいない。
伏黒だけで対応可能と判断した五条は外へ出て行った。
残った伏黒は玉犬に加えて不知井底も呼び出し、次々と呪霊を祓っていく。