第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
夕食後、部屋に集まった4人に伊地知は任務概要を説明し始めた。
「今回の祓除対象の呪霊について、データにもまとめてありますが、おさらいしますね」
無垢蕗村に巣食う一級呪霊。
これは100年に一度、村から捧げられる生贄を糧に、村に術師をも入れない強力な結界を張る。
「よって、この任務は結界が一番弱まる100年に一度の生贄儀式の日を狙って組まれます。年月をかけて弱まった結界であれば、術師も出入り可能です」
「そんな強力な結界張って、村の人は100年も閉じ込められんの?それってかなり不自由なんじゃね?」
怪訝そうにする虎杖に伊地知が説明を付け加えた。
「村人は呪力の有無に関わらず出入り自由なんです。おそらくは……」
「マーキングですか?」
「はい。呪霊は何らかの方法で村人全員をマーキングし、マーキングされた人間は結界を自由に出入りできると考えるのが妥当でしょう」
伊地知は伏黒の言葉にうなずき、眼鏡に手をかける。
「ただ、タイミングやどんな手段でマーキングしているのかまでは不明です。マーキングされた人間にどのような影響が出るかも未知数なので、たとえマーキング方法が判明したとしても、極力マーキングされないようにしてください」
マーキングによって呪霊の攻撃を受けやすくなったり、呪霊に攻撃できなくなる可能性や呪霊に操られる等、こちらに不利に働く危険性の方が高い。
一度マーキングされると呪霊を祓わない限り外すのは難しいため、注意しなければならない。