第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
「崎花温泉……ちょっとなずな、美人の湯だって!」
「び、美人の湯!?」
早速温泉を調べた野薔薇が盛り上がり始め、美人の湯と聞いてなずなも黙っていられず、野薔薇のスマホの画面を見せてもらう。
「山奥の秘湯……あ、湯の花も売ってるんだね」
「お土産に買ってったら?高専のお風呂に入れれるんじゃない?」
さすがに現地の泉質とはいかないが、高専でも温泉気分が味わえるんじゃないかと提案してみるが、なずなは悩むように難しい顔をしている。
「ううん、やめとく。風呂釜痛めちゃうし……」
「そうなの?でも、別に1日くらいいいじゃない」
どうせ高専の大浴場に入るのは多くても真希、野薔薇、なずなの3人なのだから、3人で都合を合わせ、入浴後にお湯を抜いてしまえばバレない。
しかし、真面目ななずなはそれにも抵抗があるようだ。
「ダメだよ、ほら、注意書きにも書いてあるし」
そう言って細かい注意書きの一文を指差すなずな。
隅々までしっかり読むところが彼女らしい。
「じゃ、尚更今日はしっかり温泉入らなきゃなんないわよ。伊地知さん、どんな所に泊まるの?」
「崎花旅亭という露天風呂もある温泉旅館ですよ」
「え、ここ?……夕飯、結構豪華じゃない!朝はバイキングだし!」
「ホントだ、うまそう!」