第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
五条の言う通り、今回の呪霊は他の任務と比べて判明していることが多く、事前に対策が立てやすい。
だが、逆になぜここまで情報が判明しているのか。
そこに伊地知の懸念はあった。
今回の呪霊は、以前一級術師が祓除に失敗しているのだ。
だからこそ特級術師である五条にお鉢が回ってきたというのに……
まだ一級推薦段階の1年生には荷が重いと感じる伊地知とこれから彼らに待ち受けている昇級査定、その肩慣らしにはおあつらえ向きと笑う五条。
極めて対照的だが、両者とも学生達を思う気持ちに違いはない。
・
・
・
五条から与えられた、もとい押しつけられた任務は山間部にある村落 無垢蕗村(むくろむら)に強力な結界を張って潜伏する一級呪霊の祓除。
「車でしか行けない上に相当所要時間のかかる村なので、今日は途中の温泉町で1泊し、翌朝に無垢蕗村へ向かいます」
「……温泉旅行ってそういうことだったの?」
「五条先生がタダで温泉旅行なんて用意するわけないだろ。仮に捕縛任務に成功してても、結局同じことになったと思うぞ」
「マジかぁ……」
伏黒の忠告に後部座席の虎杖ががっくりと肩を落とす。
楽しみにしていただけに落胆も大きい。
「温泉は確定なんだから、そこ楽しまなきゃ損でしょ。伊地知さん、どこの温泉なの?」
割り切らなければやっていけないと肩をすくめた野薔薇が伊地知に尋ねた。
「崎花温泉です。硫黄泉で有名な温泉郷ですね」