第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
一方五条はというと、揉めている生徒達をニマニマと笑って眺めている。
実に愉快だと言わんばかりに高みの見物だ。
「どうしても行きたい?」
「行きたいっ!」
「でもタダで温泉旅行には行かせられないな〜。任務失敗してるんだし?」
「次!次の任務頑張るから!!」
虎杖の必死の訴えに同調して野薔薇も何度も大きくうなずく。
「んもう〜しょうがないなぁ。じゃあ今回だけは特別、任務と一緒に行ってもらおっかな」
「よっしゃー!!」
2人がガッツポーズして喜んでいると、伊地知が失礼しますと断って教室に入ってきた。
「五条さん、そろそろ出発を……」
「あ、伊地知、今回は1年生達に行ってもらうことにしたから」
「なっ……!ご自身の任務を学生に投げないでください!」
「ハァッ!?」
「皆、そういうことだから。気張ってね〜」
1泊2日の予定ですぐにでも出発したいということで、慌てて準備しに寮に戻っていく生徒達。
五条がその背中に手を振っていると伊地知が険しい顔で口を挟んだ。
「五条さん、いくらなんでも今回の任務は……」
「大丈夫、悠仁達ならしっかりやるさ」
「ですが、一級任務ですよ?」
「それを含めて大丈夫だって。一級呪霊の出現タイミングは分かってるし、攻撃的な術式でもないしね」
口角を上げている五条の前に立った伊地知の表情は晴れなかった。