第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
「昇級の査定については追々連絡が行くと思うから、頑張るんだよ」
正直なところ、一級推薦と言われてもあまり実感が湧いていない虎杖は、推薦よりも気になることを尋ねた。
「……じゃあ悪いニュースは?」
「この任務が成功したら、慰労も兼ねてご褒美用意してたんだけど……残念ながらおあずけです!」
「ご褒美!?」
「何ソレ、先に言いなさいよね!!」
一級推薦の話よりも食いつく虎杖と野薔薇。
「ご褒美は温泉旅行だったんだけどなぁ」
「お、温泉!?」
黙ってられないとばかりに席から立ち上がった2人の横で、伏黒となずなは少し既視感を覚える。
野薔薇との初顔合わせになった原宿で、東京観光と称して呪いが発生した廃ビルに案内された時と似ているのだ。
「……ほ、本当に温泉旅行、なのかな?」
「いや、五条先生だぞ。絶対何か裏がある」
怪しむ2人をよそに、温泉旅行という単語に目が眩んでいる虎杖と野薔薇は今からでもメカ丸を捕まえられないかと真剣に考え始める。
「伏黒、玉犬でメカ丸の匂い追えねーか?」
「無理だ」
「そこをなんとか!」
「駄目だ。大体、どこへ逃げたかも分からねぇのに手当たり次第探すつもりか?」
逃げた場所がある程度特定されているのなら話は別だが、全く見当がつかない状況で匂いだけを頼りに探すのは現実的ではない。
「伏黒のケチ!」
「の、野薔薇ちゃん、伏黒くんも意地悪で言ってるんじゃなくて、時間もかかるし、失敗する可能性も高いからって言いたいんじゃないかな……」
ケチ黒と毒づく野薔薇をなずながなだめようと試みるが、野薔薇もそんなことは分かっていると一蹴。
口で野薔薇に勝てるはずもなく、なずなは困り顔で黙り込んでしまう。