第4章 宿儺の器と鉄骨娘
「あーあ、さすがに疲れたわ……」
朝、実家を出てから東北縦断、午後から原宿でショッピングを満喫しようと思ったら、呪いを祓う羽目に。
夕飯の後、ようやく呪術高専に着いたら、直後に強面の学長と面談が待っていた。
やっと解放されて寮の自室のベッドに倒れ込んだところだ。
正直、荷解きする気力も起きない。
天井を見上げてぼーっとしていると、ノックの音が聞こえた。
「野薔薇ちゃん、よかったらお風呂入りにいかない?」
野薔薇がドアを開けるとなずなが控えめに顔を出す。
寮の各部屋にはシャワーが備え付けられているが、疲れを癒すなら足を伸ばして湯船に浸かった方がいい、そう思って野薔薇に声をかけてみたのだ。
学生寮とは別の建物にある男女分かれた大浴場は、基本的に夕方から朝早くまで自由に使える。
大浴場といっても4、5人入れるくらいの大きさだが、なずなは気に入ってよく利用していた。
脱衣所で服を脱いでいると、あるものが野薔薇の目に留まる。
「アンタ、その背中……」
露わになったなずなの背中、腕や足にも青あざや古傷が目立つ。
「あ、ご、ごめんね。剣術の稽古とかで結構痕が残っちゃってて……」
見苦しいよね、と野薔薇に謝る。
幼い頃からの父の厳しい稽古で、竹刀で打たれたことは数えきれない。
先輩達と手合わせの時も呪霊と戦う時もよく吹っ飛ばされるので、打撲も絶えない。
「謝ることないじゃない」
「え?」
子供に厳しい修練を課す。今時虐待と咎められそうだが、呪術師の家系なら別段珍しいことではない。
呪霊を祓うのは命懸け。
それを生業にする呪術師が綺麗事だけで生きていけるわけがないこと、野薔薇自身もよく知っていた。
「それは、アンタが頑張ってきた証拠でしょ。だから謝ることなんてなんにもないわ」
「うん、ありがとう……!」