第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
降りしきる雨の中、指定された場所には歌姫が既に待っていた。
こっちよと案内されたのは、とある施設の駐車場。
「五条から内通者の話は聞いてるわね?」
4人ともうなずいたのを見て、歌姫が更に続ける。
「多分呪詛師と通じているのは2人以上。1人は学長以上の上層部、コッチは私じゃどうしようもない」
立てた2本の指の内、中指を折り曲げる。
「もう1人、その上層部に情報を流してる奴がいる。それが今回の標的。まだ容疑の段階だから、捕縛後に尋問します」
内通の容疑者、一体誰なのだろうか。
「で、京都の誰ですか?東京側の私達に頼むってことは、そういうことでしょ?」
「釘崎スゲーな……」
野薔薇の推理に虎杖が感心していると、対面した歌姫は苦々しく眉根を寄せた。
「……内通者は、与 幸吉(むた こうきち)メカ丸の本体よ」
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「この地下にメカ丸本体の与 幸吉がいます。あの子が怪しいんじゃなくて、誰も怪しくないから消去法でメカ丸なの」
歌姫とて自分の生徒が呪詛師や呪霊と通じているとは信じたくない。
だが、1ヶ月程調べ回っているのに尻尾も掴めないのも事実。
高専関係者でこうも長期間人の目を盗んで活動できる人物となると、かなり限られてくる。
与はその限られた人物の中では一番有力なのだ。