第17章 断章 薄墨
「なんてことはない二級任務のハズだったのに……!」
高専の霊安室で七海は憔悴しきった状態で悪態をついていた。
「クソッ……産土神信仰、アレは土地神でした……一級案件だ……!」
夏油が解剖台にかけられた布を捲ると左頬に大きな傷を負った灰原。
その遺体は下半身が失われている。
昨日、七海と灰原は共に遠方の任務にあたっていたが、事前情報より段違いに強い呪霊が出現。
補助監督から緊急連絡を受けた五条が急行したが、到着した時には既に遅かったらしい。
「七海、今はとにかく休め。任務は悟が引き継いだ」
「……もうあの人1人で良くないですか?」
諦めの篭った七海の言葉は、先日の九十九との会話を思い起こさせる。
術師というマラソンゲーム―……
その果てにあるのが、仲間の屍の山だとしたら?