第16章 断章 極彩
家入に治療してもらった後、殺された理子と血溜まりだけを残していなくなった五条を探して、夏油は盤星教の施設をしらみ潰しに回っていた。
本部に着くと、体が半分程の長さになった芋虫のような呪霊、理子を殺した男が持っていた武器庫呪霊を見つけ、それが発した言葉に瞠目する。
その建物の扉を開くと、白い布を被せられた理子を抱えた五条と、それをにこやかに拍手で迎えている大勢の盤星教信者がいた。
「遅かったな、傑……いや、早い方か、都内にいくつ盤星教の施設があるって話だもんな」
どこかさっぱりとした中、六眼だけが妙に冴え冴えとギラついていて、夏油には一目見ただけで異様だと分かる。
「悟……だよな?」
一体、何があった……!?
そんな夏油の内心にも五条は気づかない。
「硝子には会えたんだな」
「ああ、治してもらった。私は問題ない」
白い布から理子の手が力なく垂れており、思わず夏油が眉を寄せた。
「いや、私に問題がなくても仕方ないな」
「俺がしくった。オマエは悪くない」
「……戻ろう」
「傑」
割れんばかりの拍手の中、感情を削ぎ落としたような五条の声が告げる。
「コイツら、殺すか?」
この状況を心の底から喜び、笑顔を浮かべる周囲の教徒達のことだ。
「今の俺なら、多分何も感じない」
「いい、意味がない。見た所、ここには一般教徒しかいない。呪術界を知る主犯の人間はもう逃げた後だろう」
天元を唯一として純粋に信仰している彼らを殺したところで、何も変わらないのは火を見るより明らかだ。
「懸賞金と違って、もうこの状況は言い逃れできない。元々問題のあった団体だ、じき解体される」
「意味ね……それ、本当に必要か?」
「大事なことだ。特に術師にはな」