第16章 断章 極彩
「ハッ、化物が」
甚爾は悪態をつきながら起き上がる。
鉄筋コンクリートの屋根を砕く勢いでぶつかり、額の左側が少し切れた。
手を組み、後ろに腕を伸ばす。
骨はイッてねぇな。
今の衝撃波が無下限呪術の術式反転“赫”か……
これで五条家相伝の無下限呪術の全てを見た。
①止める力
ニュートラルな無下限呪術
②引き寄せる力
強化した無下限呪術“蒼”
③弾く力
術式反転“赫”
発動タイミング、かかる力の向き、威力
そこに上振れ、下振れ、更に五条自身の体術を加味しても問題はない。
武器庫呪霊の口から出した鎖に天逆鉾を繋ぐ。
この“万里ノ鎖”は一方の端を観測されなければ、際限なく伸び続ける呪具。
天逆鉾の最大の弱みであるリーチの短さをカバーできる。
①止める力は元より、②引き寄せる力は万里ノ鎖でリーチを得た今、逆鉾で掻き消すか俺の足でちぎれる。
③弾く力はタイミングさえ外さなければ、逆鉾を盾に凌げる。
そこまで算段したところで、恍惚と細められた六眼と目が合い、ふと小さな違和感を感じた。
本当にそうか……?
「……いや、これでいい」
鎖鎌のように逆鉾を振り回しながら、空中に浮いている五条を狙う。
「殺す」