第16章 断章 極彩
「話の続きだ」
しかし、虹龍が体当たりした場所にはもう甚爾はおらず、近くの屋根で銃を手放していた。
「俺は物を格納できる呪霊を飼っててな。呪具はそっちに入れて持ち歩いてる。……皆まで言うな、それじゃ今度は呪霊の呪力で透明じゃなくなっちまうってんだろ?」
大きく口を開けて人差し指で喉を刺激し、何か吐き出した。
小さく丸い呪霊だ。自身の体を尾から飲み込んで丸まっている。
「呪霊に自らの体を格納させてサイズを落とす。それを俺の腹の中にしまう……透明人間は臓物まで透明だろ?」
言っている内に呪霊が自分の体を吐き出し始めて、甚爾の身体に巻きついた。
「これで俺はあらゆる呪具を携帯したまま、結界を素通りできる。はじめに呪具を使用しなかったのはそういうことだ」
話しながら武器庫呪霊に呪具を吐き出させる。
「六眼相手の奇襲は透明なままじゃねぇと意味ないからな。星漿体を先に殺してもよかったんだが、六眼の視界に入るのはリスクが……」
「もういい」
これ以上奴に喋らせるのは、情報開示させるのは危険だ。
「天与呪縛だろ?術師と同様に情報の開示が能力の底上げになることは知っている。私が聞きたいのはそこじゃない」
何故結界を抜けられたかではない、どうしてここに辿り着けたのか、だ。
「何故薨星宮へ続く扉が分かった?私達は毛程も残穢を残さなかった」
「人間が残すのは残穢だけじゃねぇ。臭跡、足跡、五感も呪縛で底上げされてんだよ」
「途中に女性が1人いたはずだ。彼女はどうした?」
ここに来る前に分かれた黒井は、エレベーターの前にいた。
夏油達の後を正確に追ってきたのなら、鉢合わせたはずだ。