第4章 宿儺の器と鉄骨娘
仕方なく虎杖となずなは1階から順に捜索することにする。
「渡辺のその刀も呪具なのか?」
なずなの腰に下げられた鬼切を指差す。
「うん、鬼切っていう太刀で、渡辺一族に代々受け継がれてきた呪具だよ」
説明を続けようとしたところで鬼切が脈動した。
呪霊がいる。
虎杖も気づいたようだ。
通路の先には2体の呪霊。
腕が刃のように変形した4本足の呪霊と猫に虫の翅が生えたような呪霊だ。
「渡辺、飛んでる方頼んだ」
「分かった。虎杖くん、無理はしないでね」
虎杖が4本足の呪霊に、なずなが翅の生えた呪霊に斬りかかる。
一撃で祓ったなずなが虎杖に加勢しに振り返ると、すでに虎杖は呪霊に馬乗りになり、とどめを刺していた。
ほんの数日前まで普通の高校生だったとは思えない動きになずなは目を見張る。
「すごいね、本当に呪具を使うの初めてなの?」
「そーだな。前の高校で出たヤツとは素手で戦ったし」
虎杖の前の高校ー
伏黒が両面宿儺の指の回収任務で行った場所だ。
彼に大怪我を負わせた呪霊に素手で応戦したことになる。
これには感心を通り越して唖然だった。
「渡辺はなんか動きに無駄がないというか、小慣れてる感があるよな」
先程も自分はまず呪霊の脚を切り落としてから、二撃目で祓ったが、なずなは一撃で仕留めていた。
「私は昔から剣術の稽古をしてたからね」
「コツとかあんの?」
「うーん……先手必勝、かな」
剣道には応じ技、いわゆるカウンター技も豊富にあるが、真剣勝負では刀が身体に当たれば負傷するため、斬られる前に斬るというのが基本になってくる。
「あとは、攻撃は最大の防御とか……あ、お父さんからよく言われたのは、斬る瞬間に迷わないこと……どうしたの?」
表情がひきつっている虎杖になずなは首を傾げる。
「いや、なんか、思ったより物騒っつーか……渡辺ってよくケンカとかするの?」
「全然したことないよ!?」
剣術のコツを教えただけのはずが、とんでもない印象を持たれてしまった。