第16章 断章 極彩
夏油達がその場を離れた直後、呪霊の腹を切り裂いて男が出てくる。
少し手傷を負ってくれていればという期待も虚しく、無傷のまま。
手には鍔の部分に毛束のついた刀を持っている。
夏油の呪霊を祓ったとなると何らかの呪具だ。
それに先程まではいなかった腐肉の色をした大きな芋虫のような呪霊を身体に巻きつけている。
さっき俺を刺した刀とは違う……
身体に巻いてる呪霊もどっから湧いたんだ?
得体が知れねーな、クソ!
呪霊を祓った男は鳥居の上に着地し、辺りを見回している。
「星漿体がいねぇな。できればオマエはさっきので仕留めたかったんだが……ナマったかな」
「天内の懸賞金はもう取り下げられたぞ、マヌケ」
「俺が取り下げたんだよ、ヤセ我慢。盤星教の奴らが沖縄行った時は笑ったけどな」
コイツが匿名掲示板に天内のことを掲載したのか。
盤星教信者ではないが、口振りからして盤星教に雇われた人間なのだろう。
高専の結界を難なく抜けたことといい、全く気取られずに五条を背後から刺したことといい、相当な手練れというのが窺える。
「オマエみたいに隙がない奴には、緩急つけて偽のゴールをいくつか作ってやるんだ。周りの術師が1人も死ななかったのはクソだったが、懸賞金の時間制限がなければ、オマエは最後まで術式解かなかったと思うぜ」
「あっそ」
男を潰さんとその背後の上空に“蒼”を仕掛ける。