第16章 断章 極彩
そんな理子の心境を知ってか知らずか、またもや五条が思いつきのような発言をする。
「傑、戻るのは明日にしよう」
その言葉に再び理子がパァッと目を輝かせた。
「……だが」
「天気も安定してんだ、問題ねーだろ」
反論しかけた夏油を遮り、五条はわざとらしくサングラスを上げ、キリリと顔を引き締める。
「それに、東京より沖縄の方が呪詛人(じゅそんちゅ)の数は少ない」
「もう少し真面目に話して」
「フライト中に天内の賞金期限が切れた方がいいっしょ」
確かにそれなら一理ある。
羽田から高専までどこから現れるか分からない呪詛師から理子を守り続けて送り届けるより、賞金期限が切れた後に高専まで行く方が圧倒的に負担は少ない。
しかし、夏油にもそれなりの理由があった。
「悟、昨日から術式を解いてないな。睡眠もだ、今晩も寝るつもりないだろ。本当に高専に戻らなくて大丈夫か?」
五条の術式は確かに強い。
だが、寝たまま術式を発動できるわけではないので、当然起きていなければならない。
行使する五条自身には疲労が溜まる一方だ。
「問題ねぇよ、桃鉄99年やった時の方がしんどかったわ。……それにオマエらもいる」
五条は心配する夏油の肩を叩き、後輩達がいるであろう空港の方を眺めていた。
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「七海!滞在1日延ばすって!!何かあったのかな!?」
元気よく報告する灰原とは対照的に七海のこめかみにピキリと青筋が浮かんだ。