第16章 断章 極彩
那覇空港に立った呪術高専1年の七海 健人はここが日本屈指の観光地だというのに顔をしかめていた。
「どう考えても、1年に務まる任務じゃない」
「僕は燃えてるよ!夏油さんにいいとこ見せたいからね!!」
苦い顔をする七海とは対照的に同級生の灰原 雄はやる気に満ちている。
いつも特訓に付き合ってくれる先輩の頼みなのだ。
日頃の感謝も込めてここは頑張らねば。
「いたいけな少女のために身を粉にして頑張ってるんだ!僕達が頑張らないわけにはいかないよ!!」
「台風が来て空港が閉鎖されたら頑張り損でしょう」
七海の深いため息は空港内を忙しく行き来する雑踏にかき消されていく。
同じ頃、身を粉にしている先輩こと五条はナマコを掴んで理子と爆笑していた。
「ブハハハ!ナマコ!ナマコ!!」
「キモッ!キモなのじゃー!」
ナマコを理子に投げつけているのを眺めて黒井が呟く。
「いいんでしょうか、観光なんて……」
「言い出したのは悟ですよ。アイツなりに理子ちゃんのことを考えてのことでしょう。でもそろそろ……悟!時間だよ!」
「あ、もうそんな時間か」
楽しい時間はあっという間だ。
東京へ戻る便は15時発、着替えなどの身支度や移動時間を考えると、もう準備し始めないといけない。
理子はあからさまにしゅんと肩を落とした。
しかし、本当は黒井を救出してすぐ帰る予定だったのだ。
最後の最後に沖縄の海で遊べるなんて夢にも思ってなかったのだから、これ以上わがままは言えない。