第16章 断章 極彩
呪術高専は東京校と京都校があり、基本的にそこを拠点に任務が割り振られる。
東京校は東日本以北、京都校は西日本以南を担当するため、東京校に在籍している五条に沖縄行きの任務はまず回ってこない。
そう、これは滅多にないチャンスなのだ。
夏油が任務中だとたしなめても、譲るつもりは一切なく、天内の好きにさせるのも任務の内だろと言い返す。
同化は明日の夜、理子が自由に過ごせる時間はわずかしか残されていない。
限られた時間でも目いっぱい理子が楽しめるようにという五条なりの気遣いも感じ、反論しようとした夏油も折れざるを得なかった。
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「めんそーれー!!」
沖縄のビーチに繰り出した五条と理子は図らずもタイミングバッチリで海に向かって一直線に駆け出した。
2人の少し後ろで黒井が面目無いと肩を落とす。
「まさか盤星教信者……非術師にやられるとは……自分が情けない」
「不意打ちなら仕方ないですよ。私の責任でもある」
「不意打ちだったんですかね?“Q”の件で気をつけてたつもりだったんですけど、イマイチ襲われてた時の記憶が……」
間違いなく夏油と分かれた後だとは思うが、肝心な時の記憶が途切れてしまっている。
不意打ちだとしても襲撃者の顔くらい確認できたかもしれないのに。
しかし、過ぎてしまったことは仕方ない。
拉致犯も無事捕まったことだし、と黒井は思考を切り替えた。
「というか、飛行機で来たんですね。襲撃とか大丈夫だったんですか?」
「悟は目がいい。アイツが離陸前に乗客乗員、機内外をチェックして、飛行中は私の呪霊で外を張りました。下手な陸路より安全でしたよ……それより私は、沖縄を指定してきたことが気になります」
「時間稼ぎじゃないんですか?理子様を殺められなくても、明日の満月に間に合わないよう」
「それなら交通インフラの整っていない地方を選びます」
「まさか奴ら、空港を占拠する気じゃ!?」
「かもしれません。でも大丈夫、ココに来たのは私達だけじゃない」