第16章 断章 極彩
3時間弱の空の旅は無事に終わり、那覇空港に到着する。
待ち伏せを警戒して到着ロビーも五条の六眼でチェックするが、肩透かしを食らったかと思うほど何もない。
結局警戒していたことは何事も起こらず、取引時間の少し前に指定された取引場所に着いてしまった。
そして五条達の驚きはまだ続く。
午前11時―
「ふむ、確かに星漿体もいるようだな」
黒塗りの車から降りてきたのは白い宗教服を纏った中年の男。
雰囲気から盤星教の人間だろう。
いちいち勿体つけるように緩慢な所作に苛立ち、五条は舌打ちする。
「勿体ぶんじゃねぇよ。黒井さんはどこだ?」
「案じずともここにいるさ」
男が車の中を示すと、後部座席の奥に黒井が座っているのが確認できた。
項垂れているところを見るに気を失っている。
「黒井!!」
「理子ちゃん、落ち着いて」
居ても立っても居られずに前に出ようとした理子を夏油が制止する。
焦る理子に対して、五条と夏油は動じていないが、内心は驚いていた。
運転手含め、非術師しかいないのだ。
周囲に呪詛師らしき影もない。
侮られているのか、ただ単に無知なのか、どちらにせよ予想外だが、より早くカタをつけられそうではある。
五条と夏油は相手に勘付かれないよう小さく目配せする。
「さて、星漿体をこちらに渡してもらおうか」
「ハッ、誰が渡すかよ」
その言葉を皮切りに五条と夏油が動いた。
五条が瞬時に肉薄し、男の腕を捻り上げると同時に夏油が呪霊を使って車を捕まえ、中から黒井を救出、運転手と同乗者はすかさず拘束する。
事態は一瞬で決着した。