第16章 断章 極彩
「帰路を妨害されても面倒だし、空港を押さえておく必要もあるだろうね」
「傑の呪霊に守らせる?」
「いや、灰原と七海に頼もう」
頼れる我らが後輩の2人。
入学したばかりの1年生だが、夏油達がよく特訓に付き合ったりしているので、そこら辺の呪詛師には負けない。
ただ、七海に頼もうとすると確実に断られるので、まずは灰原に連絡する。
灰原がOKなら七海も渋々ついて来るという算段だ。
明日の朝9時に那覇空港に到着するフライトに決める頃には、灰原からも返信がきていた。
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翌朝、羽田空港に着いた3人は搭乗手続きを進めていた。
日帰りの予定のため、荷物はほとんどなく、最低限の手荷物検査が行われて、出発ゲートエリアへ。
五条は怪しげな者がいないか目を光らせている。
そのすぐ横で理子は滑走路を行き来する飛行機に目が釘付けになっていた。
「と、飛んでる……」
もちろん飛行機は知っていたが、実際に乗るのは初めてだ。
巨大な鋼鉄の塊が空へ飛び立ったり、降りてきたり……
大きな窓の外に広がる圧巻の光景に理子は言いようのない高揚を覚える。
無論黒井のことを忘れているわけではないが、飛行機に乗り込むとその高揚は更に増した。
「すげーそわそわしてんじゃん。オマエ、もしかして飛行機初めてなの?」
「なっ、飛行機くらい知っておる!乗るのが初めてというだけじゃ!」
ニヤニヤしている五条にバカにするでない!と頬を膨らませる。
そんな理子の睨みをスルーし、五条は少し腰を上げて機内を見渡した。
どの乗員、乗客も微弱な呪力しか持っていない。
ほぼ非術師、たとえ呪詛師がいたとしても貧弱な呪術しか使えないだろう。
続いて先頭部にも目を凝らす。
壁の向こう側、操縦席に見えるパイロット2人にも呪力はほとんど見えない。
「傑、大丈夫だ。機内の人間はほぼ呪力なし」
「よし、じゃあ離陸したら手筈通りに呪霊に飛行機の周りを守らせる」
窓際の席にいる理子にはそんな五条と夏油の小声の会話は耳に入らず、小さな窓を覗いて感嘆の声を漏らしていた。