第16章 断章 極彩
音楽の授業中、礼拝堂の扉が音を立てて開いた。
「天内!!」
突然の五条の乱入に生徒はもちろん若い女性教師も唖然としている。
「なっ、なな……」
その中で唯一五条を知っている理子が慌て出し、少し遅れて驚きの声が礼拝堂内に響き渡った。
「何、理子の彼氏!?」
「違っ、従兄弟!従兄弟だよ!」
「高校生!?背ェ高!!」
「おにーさん、グラサン取ってよ!」
五条も五条で状況を面白がる性質なので、スッとサングラスを外す。
もちろん微笑も忘れずに。
露わになった髪色と同じ色の長い睫毛、それに縁取られた空のような、あるいは海のような青い瞳。
その端正な顔立ちに生徒達は更に盛り上がった。
「イケメンじゃん!!」
「おい、調子乗んなよ!!」
黄色い声の中で悪態をつく理子。
ほとんどの生徒が五条の素顔に声を上げたり、頬を染めたり、恍惚のため息をつく中、唯一の大人である音楽教師がひとつ手を叩いた。
「コラ!皆さん静粛に!はしたないですよ」
「先生だって気になるくせに」
生徒達は口を尖らせている。
そんな不服な視線を受けつつ、教師は五条の方へ歩いてきた。
「身内とはいえ、勝手に入られては困ります」
「あーいや、緊急なもんで。スンマセンね」
五条は頭を掻きながら、どうやって理子を連れ出すか考えていると、教師は更に近づいてくる。