第16章 断章 極彩
孔から星漿体の動向の報告を受けた甚爾は、その芳しい内容に唇を舐めた。
「なんだアイツら、高専戻んなかったのか。ラッキーだな、これで賞金につられるのがバカからまともなバカになる」
“Q”に襲撃され、より守りが盤石な高専に籠城するのかと思っていたが、結界もなく、非術師がたくさんいる普通の学校に向かったのなら削りやすい。
甚爾は携帯電話を肩に挟み、割り箸を割ってたこ焼きをつつき始める。
『いいのか?』
「何が?」
『賞金は盤星教からオマエに支払われる手付金3000万。星漿体が殺されれば手付金はパァ。下手したら成功報酬もないぞ。オマエに依頼せずとも、始めから賞金をという話になるからな』
成功報酬は手付金とは比べものにならない額だが、闇サイトの掲示板を見た誰かが星漿体暗殺に成功すれば、盤星教にとっては甚爾に成功報酬を渡す意味がなくなる。
しかし、甚爾にはそうはならないという確信があった。
「あっちには五条 悟がいるんだぞ。ウン百年ぶりの六眼と無下限呪術の抱き合わせ、五条が近くにいる限り、星漿体はまず殺せない」
『……オマエもか?』
「さぁ、どうかな。とりあえずバカ共には、賞金のかかっている残り47時間、五条の周りの術師と五条本人の神経を削ってもらう。勿論星漿体は殺せねぇからタダ働きだ」
闇サイトに掲載した暗殺依頼は、明後日の午前11時に期限切れとなるよう設定した。
その頃には五条も五条の周りの術師も相当神経をすり減らしていることだろう。
『時間制限を設けたのは良かったな。呪詛師の集まりがスムーズだ』
「そんだけじゃねぇけどな」
『?』
「こっちの話。ボチボチ俺も向かう。思ってたより展開が早そうだ。3000万、しっかり戻せよ」
『バカ言え、その辺の匿名掲示板じゃねぇんだぞ。掲載料・手数料・その他―……』
言葉の途中だったが、甚爾は電波が悪いと携帯を切って放り投げてしまう。