第16章 断章 極彩
理子の通う廉直女学院 中等部の誰もいないプールで五条は夜蛾に電話し、状況と理子のワガママっぷりを報告していた。
「はぁ!?さっさと高専戻った方が安全でしょ!!」
電話口の夜蛾からの指示に思わず苛立ちを露わにする。
『そうしたいのは山々だが、天元様のご命令だ。天内 理子の要望には全て応えよ、と』
話にならないと電話を切り、五条は舌打ちした。
「チッ、ゆとり極まれりだな」
「そう言うな、悟。ああは言っていたが、同化後彼女は天元様として、高専最下層で結界の基となる。友人、家族、大切な人達とはもう会えなくなるんだ。好きにさせよう、それが私達の任務だ」
その会話を聞いていた黒井が頭を下げる。
「理子様にご家族はおりません。幼い頃事故で……それ以来、私がお世話して参りました。ですからせめて、ご友人とは少しでも……」
「それじゃあ、あなたが家族だ」
「……はい」
夏油が黒井に笑いかけ、黒井は少し照れながら肩をすくめた。
「傑、監視に出してる呪霊は?」
校内各所には夏油が放った呪霊が複数いる。
身近での護衛を拒否されたため、学校の教師や生徒にはまず見えないであろう呪霊に監視させているのだ。
「ああ、冥さんみたいに視覚共有ができればいいんだけどね、それでも異常があればすぐに―……」
不意に夏油が目を細め、五条の肩を叩く。
「悟、急いで理子ちゃんの所へ」
「あ?」
「2体祓われた」
「3000万かぁ……」
祓った呪霊を踏みつけて男は嗤う。
その男は目の部分をマルとバツに切り抜いた紙袋を被っていた。
「おいしいよなぁ、術師でもない、居場所も割れてる中坊殺して3000万。おいしいなぁ」
男が見たのは闇サイトの掲示板
そこには天内 理子の顔写真と所属校、「生死問わず」という条件と残り時間、報酬25万ドルと記載されていた。